小論文講評
対象論文 「阪神間における都市河川の景観の研究 〜芦屋川の事例〜」
発表者 辻吉彦
講評者 1三谷勝章 2Terdsak Tachakitkachorn


辻君の研究は,川の南北の連続性を区切る橋・鉄道により5つの範囲を設定し、景観を構成すると思われる要素を設定し,それをもとに芦屋川の景観を構成する物的構造を明らかにしたいとのことである。

まず、芦屋川が天井川という川の特性をふまえつつ調査をする必要が大いにあると思われる。天井川ゆえに景観の広がりが感じられること、また、川辺に建つ建物にかかる景観保全に対して行われていることといった、川・川辺だけでは無く、川の周辺の環境に関してもどのような背景があるのかを見る必要があったのではないかと思われる。
テクスチャー、目に入るものを切り口として考察しているが、単にそれぞれの対象があるという事実だけではなく、どのように個々の要素が重なり合っているかを見ることでその物的構成が見えるのではないだろうか。また、分析結果にて緑比率がでてくるが単なる比率だけではなく、緑がどのように配置され、目に見える範囲において、どのような位置にどのような形・大きさ・他の要素との重なりといった比率以外の要素に関する注意がはらわれるべきではないかと思われる。西岸・東岸の連続写真においても図化し、着目点を明らかにしようとする独自の図の作成が行われなかったのが残念である。
以上述べたように、着目したものの存在だけを明らかにするのではなく、それぞれそれらがどのように組み合わされることで良好な景観ができているかといった視点をもつと良かったのではないだろうか。

身近で好きな場所といったところから疑問をいだき、その疑問を明らかにしようとする姿勢を忘れずに自分の関心を深めていってほしいと思う。
(評者/三谷勝章)


全体:時間かけてよくできた調査報告で更なる研究の発展に導くことが期待できそうです。
内容:
1) もっと研究目的をしっかり考えていかなければなりません。勿論動機などは諸段階において感情的の理由で動かされたといっても研究者として根拠のある論理や方法や情報など深く追求し、本格的な目的がまとめられるのではなかろう。
2) その続きとして、研究の構成・計画がうまくたてられるはずである。同じ労力でも何倍もの情報量が得られる。
3) 本当に河川に興味を持つか、景観に興味を持つか僕に十分伝わってきません。河川に興味あれば、@相関的な歴史・地理的変容過程を概要的にでもふれ、A地域・その住民にたいして、歴史に基づいて芦屋川の利・害がどのように伴ってきただろう。いわゆる平面的にもあらわせるはずである。B河川自体において、5000分の1−1000分の1、500分の1、50分の1単位で平面・断面的かつ動的(河流、土砂、生物)・静的(堤防、河畔、植物)要素を収集し分析するべきである。Cそこでなぜ芦屋川において上流から下流までどうのこうの成ってきたことが説明できると思います。景観に興味あれば、@相関的の人間の視覚・心理的理論をふまえA自然的景観である河川に、人間によってできた土木・建築的要素(物的・政策的)が加入され、どういう風になるかなど疑問が出てくるはずである。B前者と同じように何レベル単位の各要素を収集・分析し、C客観的な結論ができるはずである。
表現:
1) 断面兼写真の説明がわかりやすくいいと思いますが、やはり平面も入れてもらいたいです。
2) ちゃんとGraphicScaleもDirectionも断面説明もいれてすばらしいと思います。
3) ただ、もっと建築学生として図面をうまく処理してもらいたいです。
4) [(辻君+横川さん)/2]2 でやってもらいたいです。
5) 「B」ですね。
(評者/Terdsak Tachakitkachorn)

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