コラム

これからの「人新世」を生き抜く人類にとって、イノベーションは宿命である!?(上)

2020年4月6日(月)

〜「完新世」から「人新世」へ

地質学者たちの議論によると、46億歳(推定)の地球は新たな地質時代「人新世」(Anthropocene)に入ったそうだ。これまで1万2千年続いた「完新世」(Holocene)では世界の気候は非常に安定していて、そこに登場した私たちホモ・サピエンスが、地球という全体システムの一部としてその表面にへばりついて文明を発展させるのには大変好都合であった。我々は、地球にとってほんの取るに足らない存在だったのである。

これからは、逆に我々が大気・海洋・エネルギー・生態系などからなる地球システムに『支配的な』影響を与える、人類史上未だかつて経験したことのない異次元の世界を生きることになるという。

では、そこはいったいどんな世界なのか…?

それは、不安定で予測不能で不確実な「異常が当たり前の世界」、いわゆるニュー・ノーマルの世界である。

ここ50年で一気に加速した産業社会の高度化・経済活動のグローバル化は、貴重で広大なアマゾンなどの熱帯雨林や森林の乱開発、生物多様性や生態系の破壊、過度な二酸化炭素排出による温暖化にますます拍車をかけ、もはや地球が本来持っていたはずの自己復元力(レリジエンス)は失われる寸前の瀬戸際まで来ている。

今まさに渦中の新型コロナウイルス禍は、それ自体極めて不確実・不安定で異常な状況を全世界にもたらしているが、重要なのは、これが百年とか数十年に一度のパンデミックで、それをある程度乗り切れば元のノーマルな世界に戻れる…などとは決して考えない方が良いということだ。

21世紀が新型ウイルスとの不断の戦いになるということは、前世紀の終わりから盛んにウイルス学者が警告していた。今回の真因がどうであれ、これからも新型ウイルスが人間社会に続々と出現してくるのは、ヒト圏と野生動物圏の境界域を蔑ろにして生態系機能を破壊し続けたことの当然の帰結であろう。 では、私たちはこれからこの「人新世」をどう生きるのか?(「下」に続く)

「人新世」とは:
https://ja.wikipedia.org/wiki/人新世

これからの「人新世」を生き抜く人類にとって、イノベーションは宿命である!?(下) http://www.lab.kobe-u.ac.jp/stin-innovation-leader/column/200409.html

  • 宮崎 昭彦

    オフィス・インディペンデント代表、 元A.T.カーニー、モニターグループ