この度、社団法人日本鉄鋼連盟のご支援を得て「関西鉄骨構造研究会」をスタートさせることになりました。本研究会の前身とも言えるのは、1995年の兵庫県南部地震において、1981年の新耐震設計法施行以後に設計・施工された鉄骨造建物でも溶接接合部周辺に深刻な損傷が生じていたことを踏まえ、兵庫県都市住宅部建築指導課、神戸市住宅局建築審査課の協力を得て、兵庫県建築士事務所協会、兵庫県建築士会、兵庫県鉄工建設業協同組合、神戸大学鋼構造研究室の若手メンバーを中心に、1997年5月に発足した「兵庫県鉄骨構造研究会(世話役:神戸大学名誉教授 田渕基嗣先生、代表幹事:構造空間研究所谷口孝生氏)」です。この研究会では、健全な鉄骨造を建てるためには設計・製作・施工の共同作業が不可欠であることを認識し、鉄骨の溶接の実際を知り、接合部の力学的特性を知り、今一度原点に帰って鉄骨の溶接を勉強するための場を提供し、十数年にわたって、設計者、行政職員、ファブリケータ管理技術者など、若手の技術者を中心に、溶接の基本・鉄骨製作の基本・鉄骨検査の基本の講義をはじめ、溶接施工の実体験・超音波探傷検査の実体験、鉄骨製作工場見学・鉄骨造現場見学、柱梁接合部載荷実験見学、など鉄骨製作に主眼を置いた活動を行ないました。その結果、初めて溶接を勉強したデザイン事務所の人にも溶接に対する基本知識を習得していただくことができ、健全な鉄骨構造の普及に少しは貢献できたと考えています。
新しく開催する本研究会も同様の主旨の下で活動を行う予定です。鉄骨造建物の耐震性能は、柱梁接合部、ブレース端部接合部、柱脚などの、溶接を伴う接合部の性能で決定すると言っても過言ではありません。しかし、実際の設計・施工に際しては、接合部の納まりや溶接部の詳細など、鉄骨造建物にとって最も重要なポイントが図面に正確に指示されず、あいまいなまま鉄骨加工に入り、監理・管理も不十分なまま建物が建てられている場合があります。本研究会では、初心者にも理解できるように、また、経験者にも新しい知見が得られるように配慮した活動を行いたいと考えています。