建物の配置と騒音


 


建物の配置によって,騒音問題が著しくなったり,軽減されたりすることがよくあります.建物の配置は,建築の音環境の計画においてまず考慮すべきポイントです.

 



これは,あるマンションの廊下から中庭(駐車場)を見た写真です.このマンションは,この駐車場を囲むようにL字型の平面をしていますが,裏ととなりには別のマンションが建っており,駐車場は四方を建物で囲まれる形になっています.そのため,駐車場での車の出し入れや話し声,あるいは遊んでいる子供の声が良く響いて,大変うるさくなっています.駐車場の騒音だけでなく,廊下で遊んでいる子供の声などの騒音も,同様にうるさく感じられます.このような配置は,駐車場の騒音を外へ出さないことにはなりますが,内部がうるさくなる欠点があります.

 



同じマンションの裏側ですが,上図と同様に建物に囲まれた半閉空間ができています.やはり駐車場や中庭があり,そのため,車の音や子供の声が響き,さらに各戸のベランダが面しているため空調機のほか家事作業の音などもよく聞かれます.ところで,半閉空間の音場は予測が難しく,今もって十分な予測法は確立されていません.残響があることは確かですが,通常の室内音場とはちがって拡散音場ではないため室内音響理論は適用できません.一般に,幾何音響によるシミュレーションが使われることが多いようです.

 



これは,同じマンションのエレベータ機械室です.住居部分とエレベータシャフトは廊下をはさんで離れており,振動が伝わらないよう躯体も絶縁されています.この機械室も建物本体から少し離してあり,絶縁されています.エレベータの機械を振動源とする固体音は,建物における固体音問題のなかでももっとも著しいもののひとつです.

 



これは,ある会社の社員寮です.手前の建物が居室のある棟で,右手奥が玄関,共用部分を含む建物です.画面右手から奥には高速道路およびその下を走る国道があり,道路交通騒音が著しい地域です.この写真のように,高い静穏性を要する居室部分を道路から離し,別の建物の背後に建てることにより,道路からの距離による距離減衰に加えて建物による回折減衰が期待でき,騒音対策上有利になる配置です.

 


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