小論文講評
対象論文「地域の望むコミュニティの核としての学校のあり方に関する研究」
発表者 関口真由美
講評者 1藤井正嗣 2梅本智哉


■研究概要
小学校は地域の中心的な立地と大きなオープンスペース・施設という特徴を持ち、地域住民にとってもっとも親しまれている公共施設のひとつである。現在多くの学校では、地域住民のコミュニティ形成を目的として、学校施設が地域活動のために開放・利用されている。
そこで学校建設の際、計画者と地域住民との話し合いが行われた神戸市立浜山小学校を調査対象とし、計画時に提案された地域住民の要望と建築空間への反映、実際の地域住民の利用をみることで、”地域が望む学校のあり方“を機能的な要求だけでなく地域住民が抱く小学校に対する思いを踏まえながら得ようとしている。

■研究意義
 学校のあり方を地域住民の視点から明らかにすることは、地域施設として小学校を捉えており、週休5日制や総合的な学習の導入など学校教育の方針からも今後ますます重要になる研究である。

■研究成果
 小学校は生徒の為の教育施設としてだけでなく、地域住民の為の施設でもあるという視点と、地域に根ざした小学校計画のひとつの指針が得られた。

■感想
・地域住民の学校を利用した活動だけでは知ることができない地域住民の思いを、計画時に出された要望と地域住民へのヒアリングを通して発見しようとする点が個性的であると思います。
・調査に僕もついて行かせてもらったのですが、ヒアリングを通して地域住民の個人的な学校に対する考えがいろいろあり、学校はこんなに地域のものなんだということが学べたのではないかと思っているのですが、それをもっと論文に生かしたらよかったのではないかと思います。
・地域住民の学校利用を机やいすのレイアウトと共に図化している点が、活動の様子を知るのに役立っていると思います。
ただ、活動面のみを取り上げるだけではなく、授業面や放課後・土日での生徒との関わり、校庭の手入れなど様々な形での学校と地域の繋がりも取り上げた方がいいと思います。
(評者/藤井正嗣)


■どのような研究か
コミュニティの核として、小学校はただ児童が学ぶための場所というだけでなく、地域に開かれた空間であるべきだと筆者は考えている。浜山地区はまちづくり協議会の活動が盛んで、浜山小学校は移転改築の際、地域から出された新校舎に対する要望を取り入れて設計された学校である。設計段階で地域から出された要望、そして現在、地域活動の場として小学校をどのように使っているかを調べる事によって、地域の望む学校のあり方を明らかにしている。

■得られていたこと
・ 浜山小学校の移転改築について、運河との関わり、外観・配置、景観・環境、学校設備、児童の教育・活動といった面から、どのようなことを地域の人々は学校に望み、それが実際の建物にどのように実現されているか。
・ 地域の要望の多くを実現することのできる機能を持った開放棟においての地域の人々の使用状況
がよく得られていたと思う。

■研究の意義・価値
地域の人々がコミュニティの核としての小学校に対する想い、開放棟の使用されている現状を捉えており、今後、学校のあり方における研究をする際に手がかりになるだろう事が多いのではないか。

■感想
浜山小学校の現状からであるが、教室、エントランス、そして運動場から運河を見ることが出来ること、地元の人々の要望がたくさん実現されている事に驚いた。この結果が、親近感を生み出し、また地域の人々や児童が自慢できるような学校にしていることが感じられた。しかし、運河側のテラスで児童が、また、開放棟で地域のお年寄りが給食を食べるという活動が現在はなされていないことに関しては、重村先生が大変残念であるおしゃっていたが、私もその通りだと思った。校長先生など先生方によって地域活動としての小学校の開放棟への理解度が異なり使用に差異が生じることは確かに難しい問題であると思うが、何か筆者の提案のようなものがあれば良かったのではないか。また、地域の住民の想いが校舎に実現された部分の論と地域活動の場としての開放棟の現在の使用状況についての論に関しては、もっとリンクさせての考察が出来ればなおさら良かったのではないかと考える。
(評者/梅本智哉)