小論文講評
対象論文「町屋の改装による変化とその要因との関係性について  〜名古屋のある町屋を通して考える〜」
発表者 安藤絵里子
講評者 1正井陽子 2岡野綾子 3RICCI, MARTIN SEBASTIAN


■ どのような研究か
90年に渡って住み継がれている名古屋の一軒の町屋を通して、家族構成の変化や時代背景などの日常生活とのかかわりの中で、町屋が変化していく過程を追い、その関係性を明らかにする。指標として家族内の変化、時代背景、流行、慣習、合理をあげている。

■ 何が得られていたか
指標として仮定した各要素がどのように家の変化に関係しているのかが具体的に示されている。
結婚や死去による世代交代を機会に、新しい生活様式が持ち込まれる。太平洋戦争の前後で接客中心の住居から、家族中心の住居へと変化している。生活様式は台所・居間を中心に変化しているからか、通りニワ部分の改装が多い。など。

■ どのような価値や意義があるか
名古屋の町屋の大正時代から現在までの家の変化が具体的に示されていること自体に歴史的な価値がある。時代背景や家族の変化と家の変化の関わりが具体的に示されている。

■ 感想
指標をきちんと定義してあるところが素晴らしいと思いました。名古屋の歴史的背景が興味深いが、名古屋の町屋についての説明もあると良かった。プランが、使われ方・高さと共に詳細に描かれ、大変よくわかった。台所のまわりについて、電気製品の現れや、食事の仕方の変化が具体的に示されておりおもしろい。接客空間としてどこが使われているかの移り変わりも大変興味深い結果が明らかになっている。年表を作ったことはとてもいいと思うが、もう少し分かりやすくなると良い。よく調べられ、うまく整理されおり、素晴らしいと思います。
(評者/正井陽子)


■どのような研究か
 名古屋に現存しているある一軒の町家の1930年代から現在にいたるまでのプランの変遷を、ヒアリング調査で得た情報をもとに図面化し、そこに見受けられる時代ごとの家族構成や社会情勢の変化との関連性を明らかにしたものである。

■どのような価値や意義があるか
  一軒の町家における改装の歴史を詳細にみていくことが、結果として日本の住宅史をたどることにつながるという非常に意義のある研究である。

■講評
  研究対象となった町家のプラン変遷の過程と、それに関わると考えられるいくつかの要因(家族構成・時代背景など)を、時間軸を基準としてわかりやすく一つの表にまとめあげたことは高く評価できると思う。少し残念であった点は、研究対象としたのがただの古い家ではく、せっかく伝統的な名古屋の町家であったにも関わらず、町家そのものの分析に関する記述が形式上の特徴について軽く言及する程度にとどまっていたことである。調査結果より通り庭の大幅な改装が認められたのであれば、通り庭とはどういうものであったのか、土間と床上空間の関係はどうであったのか、その関係は改装によってどう変化したのかといったことまで研究を掘り下げていくこともできたのではないだろうか。また、今回研究対象であったような通り庭型の町家の改装は全国的に頻繁に行われていることであり、地域ごとにその改装内容が特徴付けられるといったこともみておくと参考になるかもしれない。今後この小論文をもとに町家や住宅史について研究を深めていくことで、より深い洞察と分析が可能となり、さらなる成果が期待できると思われる。
(評者/岡野 綾子)

3
Recent presentation by miss Ando was very interesting to me because it was about a subject of my particular interest and she did it giving very detailed and precise information about the evolution of the chosen example.

Plans where very rich full, but (maybe since my lack of understanding) I thought the information could be supported and easier to understand with more graphic elements. For example showing pictures of the final result of the changes produced in the house or other kind of expression, using graphics on the plans to show the way people use the house and its changes along the years, or the relation between the different spaces of the house

The point, which I found particularly interesting, is the way kitchen and dinning room changed from a very Japanese style where the cooking place is on the ground and the dinning room is connected by sliding doors in an elevated space with "tatami". Since we can see the evolution of this space along the years to the final integrated dinning-kitchen room, it is possible to see the changes that happened in every day's people's way of living in Japan from the 30's to the present day.
      (Ricci Martin Sebastian)

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