コラム

「ポストコロナ」のイノベーション①:(全体像)どのように考えるべきか

2020年4月30日(木)

新型コロナウイルス感染症によって、我々の生活や仕事は激変しました。2020年2月29日の「小中高休校宣言」、4月7日の「緊急事態宣言」以降変化が加速されていますが、今年年初以前の常態にすぐ戻るとは考え難く、不自由さは続くはずです。まさにニューノーマルの時代です。このコラムでは変化の後に起きる「ポストコロナ」のイノベーションについて考えます。

ところで、この状況はイノベーターにとってチャンスと言えます。

大企業でありながらイノベーション創出の宝庫であるリクルート社は、「イノベーション創出は「不」が起点となる」という企業理念を掲げています。不便・不安・不満・不自由・不具合などを解消することがイノベーションにつながるという意味です。(*1) 社会課題を起点に新規事業を創ると言い換えることもできる。

今はまさに、「不」や「社会課題」で満ち溢れている時代です。世の中が安定して人々が現状に満足している時期、社会は保守的になり、新しいものが生まれにくい。逆に、今は新しいものが渇望されており、イノベーションが生まれやすい時期です。リーマンショックの後も、UBER、AirBnBのようなベンチャーが世界を変えました。

では、「ポストコロナ」のイノベーションとはどのようなものでしょうか?

今年1月以降、経済の縮小が顕著ですが、その中でも成長している産業があります。
B to Cの分野: ネットショッピング、食品・日用品販売、テイクアウト、デリバリー、遠隔医療、動画配信、ウェブ教育など
B to Bの分野: 物流、工場のオンライン化・IoT化、ウェブ会議、クラウド・サービスなど

これら事業はポスト・コロナでも成長が続く可能性があります。しかし、今成長している分野を追ってさえいればイノベーションに行き着くわけではありません。
そういう見方は下記の理由で近視眼的と言えます。
* 上記事業はたまた時勢に乗じて伸びているが、成熟産業が大半である。
* 傍から見て事業目的が分かりやすいので、今後新規参入が増えて利益率が下がると思われる。
* 表面的に見えている事業ばかり追っていると、その周辺や背後にあるビジネスチャンスに気づき難い。

現状提供されているソリューションに満足していると、長期で見て危険です。

では、イノベーションの形はどうなるのか?ありきたりのソリューションを追うだけでなく、ソリューションの起点となる「社会課題」を掘り下げなければなりません。
それこそが差別化の根源です。ポストコロナでは、下記のような社会課題が考えられます。

1. 人同士の接触を減らしながらビジネスを成立させること
1-1. 人同士の接触が前提だった場所の変革とは?
1-2. 今までと違う「接触方法」とは?
1-3. オフイス、飲食店、スーパー、スポーツ、エンタメ以外に課題を抱える場所とは?

2. リアルな現場における人手不足を賄うこと
2-1. 医療、介護、工場、物流、店舗以外に問題が起きている現場とは?
2-2. 専門家、管理者、単純労働者など不足する人材の質に合わせた対応とは?
2-3. IT化やロボット活用以外に考えられる解決方法とは?

3. ITの新たな活用方法を提示すること
3-1. テレワークを実施するうえで起きる新たな課題とは?
3-2. DX(デジタル・トランスフォーメーション)の新しい姿とは?
3-3. ITが解決するべき今まで見えなかった課題とは?

4. ビジネスの新たなパラダイムを作ること
4-1. 新たな生活、仕事の目的とは?
4-2. 従来と異なるコミュニケーションとは?
4-3. 人々が持つべき新たなマインドセットとは?
4-4. 新しい家庭、病院、オフィス、店舗、物流、工場etc.の形とは?


この枠組みで十分であるのか色々な意見を伺いたいですが、当分これをベースにブレインストーミングを行えば効果的と思います。
このコラムではポスト・コロナのイノベーションという観点で、様々な企業やビジネスを分析して行きます。

(*1)リクルート:イノベション創出の強化:
https://www.recruit-ms.co.jp/service/theme/innovation/02/

  • 尾崎 弘之
    (プログラム運営責任者)

    神戸大学科学技術イノベーション研究科教授、経営学研究科教授、プログラム運営責任者