コラム

「音楽のレントゲン」を発掘する

2020年9月7日(月)

X線写真で有名なヴィルヘルム・レントゲン(1845~1923)の親戚にあたり、10年後に誕生した作曲家ユリウス・レントヘン(1855~1932)。
ドイツ・ライプツィヒの音楽一家に生まれ育ちましたが、オランダに帰化したためレントヘン(レントヒェン)とよばれています。

作曲家、ピアニスト、指揮者、そして教育者としてオランダの音楽界に多大な功績を残したレントヘン。
600を超える膨大な作品を残しながらも、その存在はあまり知られていません。(当時でも、「有名でない方のレントゲン」と言われたことがあったようです。)

私はウィーン留学時代に、彼の「ヴァイオリンとピアノのための作品」をレコーディングする機会に恵まれ、レントヘンに出会いました。
物悲しく哀愁を帯びた旋律、ユーモアと優しさ、クライマックスに突き進む強いエネルギー。彼の音楽の魅力に惹かれた私は、自主リサイタルでは毎回必ず取り上げ、日本初演を行っています。

優れたクラシック音楽は、日本でほぼ全て紹介済みと思われがちですが、レントヘンのような素晴らしい芸術家がまだ埋もれています。モーツアルトやベートーヴェンのように誰でも知っている曲を演奏する楽しさもありますが、レントヘンのような新しいコンテンツを紹介することも演奏家としての楽しみです。

写真出典:Wikipedia

来たる10月15日(木)、「佐原敦子ヴァイオリンソロリサイタル」@豊洲シビックセンターホールにて演奏するのは、レントヘンの「無伴奏ヴァイオリン組曲Op.68a」全3曲です。コンサート活動の自粛を余儀なくされた今年の6月に偶然見つけ、取り組み始めました。

1720年に作曲されたJ.S.バッハの無伴奏パルティータに着想を得ており、バロックの舞曲を基に書かれています。一瞬、J.S.バッハ?と思った次の瞬間には、レントヘンの独特でロマンティックな世界に誘われるとても素敵な作品です。

レントゲンとレントヘン。2人の方法は違いますが、日々の私たちを支えてくれています。
レントゲンはX線写真の発明で私たちの健康を支え、レントヘンは音楽で私たちの心を癒し、勇気、希望を与えてくれます。

身体と心。どちらも大切です。

コロナにより未だ先が見えない不安な状況ですが、音楽が少しでも皆様の心の栄養となりますように。レントヘンの音楽で皆様と心あたたまるひとときを過ごすことができたら幸せです。

佐原敦子ヴァイオリンソロリサイタル
~ユリウス・レントヘン:無伴奏ヴァイオリン組曲 Op.68a 全曲演奏会~
2020年 10月 15日(木)19:00開演 (18:30 開場)20:30終演
豊洲シビックセンターホール

東京メトロ有楽町線・豊洲駅7番出口より徒歩1分
新交通ゆりかもめ・豊洲駅改札フロア直結)

主催:プロジェクトS
後援:オランダ王国大使館
お問い合わせ:projects.concert@gmail.com
チケット:全自由席 3,000円 学生 2,000円


お申込みは、こちらよりお願いいたします。


佐原HPのリサイタル記事

  • 佐原 敦子

    東京藝術大学非常勤講師、感性と論理をつなぐアーティスト