非連続なイノベーション

イノベーションを理論化したヨゼフ・シュンペーターは、企業現状のマイナーな改良ではない抜本的な改革である「非連続なイノベーション」を唱えています。劇的な環境変化が予想される5年後、10年後に成長している事業が必要な企業にとって、まさに非連続なイノベーションが重要です。

新規事業と既存事業の改良

出典:尾崎弘之(2018)「新たなる覇者の条件:なぜ日本企業にオープンイノベーション が必要なのか」日経BP社

同じ「イノベーション」でも、人によって異なった意味で使われることが多いです。イノベーションは大きく二つに分けられ、ひとつめは「既存事業のイノベーション」。既に稼働している事業をベースにして、品質の改良、コスト削減などによって利益率を上げることです。このイノベーションは現状の延長線上にあるため自社に情報が揃っており、比較的容易に実現できます。
しかし、自社を本当に変えるようと思えば、既存事業の改良でなく「新規事業のイノベーション」を目指さなければ意味がありません。これは現状の延長では実現できません。非連続を目指すには、「新市場への進出」と「外部の力を使った新製品開発」の2つのベクトルがあります。ベンチャー企業からアイデアや技術を導入するオープンイノベーションがその典型的な手段です。

オープンイノベーション(OI)の模式図

出典:尾崎弘之(2018)「新たなる覇者の条件:なぜ日本企業にオープンイノベーション が必要なのか」日経BP社

大企業が大学やベンチャー企業と協力してオープンイノベーションを目指す場合、経営者がコミットすることは勿論、組織的な対応を行うことが重要です。大企業は組織が複雑で、部門間に壁ができていることが多い。この壁を壊すには、社内のマインドセットをオープンに変えなければなりません。また、大学やベンチャー企業との交渉は、R&D部門や事業部がバラバラに行うより、自社の全体像を理解して発言力があるOI推進部門が担当することが望ましい。