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液体金属二相流の流動評価

目的

 連続鋳造では,タンディッシュから鋳型に溶鋼が注入され,鋳型を通過した溶鋼が冷却に伴い徐々に硬化する.近年では,溶鋼流出量の制御や,鋳型内の溶鋼の均質化を目的とし,鋳型外部から磁場を印加する流動制御が行われている.また,タンディッシュ内にアルゴンガスを注入することで,介在物の浮遊促進や溶鋼の均質化が行われているが,アルゴンガスが鋳型内に流入すると,鉄鋼内に中空が生じ欠陥となることから,溶鋼内を流動する気泡流動の把握と適切な予測が重要となる.
 液体金属気液二相流は,水−蒸気二相流に比べ気液密度比および表面張力が大きく,既存の二相流動モデルの適用性評価については,さらなる実験的解明が必要である.更に磁場が印加された液体金属中を気泡が流動する場合,磁場が乱流や気泡後流を抑制し,気泡の相互作用,ボイド分布などに強い影響が生じるが,実験の困難さから十分な実験データが得られていない.
 そこで本研究では,別途開発している超音波トモグラフィ,ラジオグラフィなどの計測手法を用いて,液体金属内の流動に関する研究を行っている.

 

研究内容

 

液体金属には常温で液体のGaInSn(ガリンスタン)を用い,容器内を流動する気泡を対象として,超音波トモグラフィによる気泡分布,超音波速度分布計測法による気泡速度計測を実施している.これらの計測システムは,研究室にて開発してきたものである.  
 気泡が連続的に容器内を上昇する条件にて,水 - アルゴン,GaInSn - アルゴンの各条件において,超音波トモグラフィにて計測した連続気泡分布の結果例を示す. この例では,一断面の取得に1ミリ秒,500フレーム/秒で連続トモグラフィ計測を実施し,約1秒間における結果を疑似三次元表示させてものである.液体金属は水に比べて表面張力が大きいため,気泡形状が球形に近くなり,更に気泡の変形が少なくなっている.その結果,気泡上昇に伴う揺動も低減していることが分かる.



 

発表論文

H. Murakawa, S. Maeda, S. Eckert
Effects of a horizontal magnetic field on the cross-sectional distribution of gas bubbles chain rising in a gallium alloy, International Journal of Multiphase Flow 170, 104649 (2024). https://doi.org/10.1016/j.ijmultiphaseflow.2023.104649  


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