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水平狭隘流路内サブクール沸騰熱伝達における伝熱面表面構造の影響に関する研究

目的

  電子機器の小型高性能化に伴い発熱密度は高くなっており,高熱流束での冷却と高密度熱輸送が必要となっている.これらの要求を満たすために蒸発潜熱を利用した 二相流体ループ式冷却システムが注目されている.このシステムにおいて核沸騰域で,潜熱輸送で高い熱伝達率を得られるが,熱伝達率の更なる向上のためには沸騰核密度の増大 が有効である.一方,高熱流束除熱では,核沸騰から膜沸騰への遷移による限界熱流束に配慮する必要がある.限界熱流束はサブクール度が大きいほど,質量流束が高いほど高く なることが知られている.すなわち,熱伝達率の向上だけでなく,膜沸騰遷移現象の把握は必要不可欠である.
 本研究では,沸騰伝熱促進面として溶射加工面を用いる.これまでの研究から,サブクール沸騰では,溶射面の方が平滑面より限界熱流束が高くなる結果を得た. これは,離脱気泡径が小さくなることで,サブクール水中での凝縮が進行したためと考えられる.そこで,サブクール沸騰を対象とし,作動流体物性,伝熱面表面構造が熱伝達特性に与える影響を評価する.

 

研究内容

 

 狭隘矩形流路底面加熱を対象とする.流路幅,流路高さはそれぞれ20 mm,4 mm とした.流路下部には流路と同じ幅で長さ50 mmの銅製伝熱面が設置されている. 作動流体には,FC-72およびHFC-245faを用いた.実験装置はアキュムレータを有する二相流体ループであり,アキュムレータによって試験部入口圧力は一定に保たれており, 入口サブクール度は10から30 Kまで変化させた.試験部では熱伝達率および断面平均ボイド率を計測した.
 平滑面および溶射面に対するHFC-245faの沸騰曲線を図に示す.沸騰曲線の勾配はいずれも一定であり,発達した核沸騰が起こっていることがわかる. 溶射面によって約2倍の伝熱促進効果が得られ,限界熱流束も増大した.溶射被膜の多孔質構造が液の供給を促進し,伝熱面がドライアウトすることを 防いだと考えられる.
 現在,伝熱面に溝加工を施した試験部,その溝加工に溶射を施した試験部について研究を進めている.


 

発表論文

H. Asano, T. Nakamura
Effect of surface structure on void fraction of subcooled forced boiling in rectangular narrow channel, Proc. of The 16th International Heat Transfer Conference (2018) pp.1349-1356. https://doi.org/10.1615/IHTC16.bae.023156

H. Asano, J. Yoshidome, T. Nakamura, T. Gomyo
Effect of Heat Transfer Surface Structure on Wall Temperature and Void Fraction Characteristics in Boiling Transition, Multiphase Science and Technology 27 (2015), pp.133-146. https://doi.org/10.1615/MultScienTechn.v27.i2-4.30

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