クランプオン式超音波流量計による蒸気流量計測

目的

　工場や発電所における熱需要の多くは蒸気により供給されている．しかしながら，既設配管において蒸気流量を計測する手法は限定されており，工場内での蒸気流量の把握は困難である．そこで本研究では，クランプオン式の超音波流量計に着目した．既存のクランプオン式超音波流量計を用いて蒸気の流量計測を行う際に，SN比（信号ノイズ比）の低下が問題となる． SN比が低下する主な要因は，1．センサが高温になることでセンサ感度が低下する，2．液体に比べ蒸気の方が透過する信号が減衰する，3．蒸気が放熱することで液滴，液膜が発生し，超音波の伝播を阻害する，といったことが挙げられる．
　本研究ではクランプオン式超音波蒸気流量計の開発を目的とし，センサ開発，計測手法，信号処理法といった多様な面から蒸気流量計測の実現に向けての検討を行っている．

研究内容

　蒸気が放熱することで湿り蒸気となり，液滴，液膜を伴う湿り蒸気となる．そこで，これらの超音波透過特性に及ぼす影響を評価するため，湿り蒸気を模擬した水―空気の二相流の流れにおいて超音波の流量計測を行った．
　空気及び水の流量を変化させた条件において，受信側センサによって受信した超音波波形，配管内の二相流の観察結果をそれぞれ示す．配管内の様子から配管底部を水が流れる層状流では，良好な受信波形が確認できる．それに対して配管内を液滴が噴霧し，液が配管壁を覆うように流れる環状噴霧流の条件では受信波形が小さくなっていることが分かる．
　この知見を基に現在は蒸気流量の計測を行い，湿り度の違いによる超音波流量計の指示値への影響について評価している．

発表論文

H. Murakawa, S. Ichimura, K. Sugimoto, H. Asano, S. Umezawa, H. Taira, M. Ibi, H. Akahane
Measurement of steam flow rates using a clamp-on ultrasonic flowmeter with various wetness fractions, Flow Measurement and Instrumentation 80, 101997(2021). https://doi.org/10.1016/j.flowmeasinst.2021.101997

H. Murakawa, S. Ichimura, M. Shimada, K. Sugimoto, H. Asano, S. Umezawa, K. Sugita
Effect of incident angle on ultrasonic transmission in steam flow for use with clamp-on ultrasonic flowmeter, Mechanical Engineering Journal 7(4), 20-00131 (2020). https://doi.org/10.1299/mej.20-00131

H. Murakawa, S. Ichimura, K. Sugimoto, H. Asano, S. Umezawa, K. Sugita
Evaluation method of transit time difference for clamp-on ultrasonic flowmeters in two-phase flows, Experimental Thermal and Fluid Science 112 (2020) 109957. https://doi.org/10.1016/j.expthermflusci.2019.109957

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