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超音波トモグラフィ法の開発

目的

 二相流の流動現象においてボイド率は重要なパラメータの一つであり,流動現象が大きく変化する目安として,流動様式の判別などの評価に用いられている.ボイド率が変化することで二相流の圧力損失や伝熱管周りの熱伝達に大きく影響するため, 工学プラントの多くでボイド率分布やそれに伴う流動様式の把握が重要である.しかしながら,作動流体が不透明流体である場合,光学的手法を用いた実験が不可能であり,計測手法が非常に限定されており, 不透明流体の流動特性把握のために新たなボイド分布計測手法の開発が求められている.
 本研究では,超音波によるボイド分布の過渡的変化を定性的に把握し,ボイド率評価への応用が可能な超音波トモグラフィ法の開発を行っている.

 

研究内容


Fig. 1 Time-series of the void distribution

Fig. 2 Synchrhonized measurement
 

 過渡的な流れ場を計測するためには,時間分解能の向上が必要である.一断面の計測に要する時間はセンサ数に依存するため,できる限り少ないセンサ数によって,良好な断面ボイド分布を取得することが必要とされる. そこで本研究では,流れ方向には一様な厚さであるものの,広角に超音波を送受信可能な広角センサの開発を行った.これにより,気液界面によって生じる反射信号の信号ノイズ比を向上させることで, 8個のセンサによる反射法を利用した超音波トモグラフィの構築を行った.反射法とは,送信された超音波が気液界面で反射し受信するまでの時間遅れから,センサから気液界面までの距離を求める手法である. このトモグラフィ計測は,一断面の取得に1ミリ秒,500フレーム/秒を達成した.図1に示すように,再構成画像を連続的に時系列で並べることで疑似三次元ボイド分布の取得が可能となる.
 このシステムを用い,水 - アルゴン気泡流条件において,超音波トモグラフィおよび高速度カメラを同期させ計測したボイド分布の結果例を図2に示す.高速度カメラを用いて同時に計測した結果と比較することで,良好な結果が得られている事が分かる. これにより,気泡の挙動を定性的に把握可能であることが分かった.本計測システムを用いて,液体金属二相流の流動挙動の解明を進めている.

 

発表論文

H. Murakawa, T. Shimizu, S. Eckert
Development of a high-speed ultrasonic tomography system for measurements of rising bubbles in a horizontal cross-section, Measurement 182, 109654 (2021). https://doi.org/10.1016/j.measurement.2021.109654


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