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超音波流量計の高度化

目的

 工場における製品品質や,発電所におけるエネルギーの有効利用において,流量計測は非常に重要とされる.特に発電所などの給水配管では,オリフィス流量計といった配管内に既設の流量計によって流量を計測している.既設の流量計の問題点として,整備性の悪さ,流量計前後での圧力損失, エロージョンや物理的な可動による部品の摩耗やゴミの詰まりなどを原因とした測定誤差の増大が報告されている.火力発電において給水量は蒸気量,ひいては発電量に影響を与えるため,既存流量計のオンサイト校正(キャリブレーション)が求められている.
 本研究では超音波流量計に着目し,オンサイトキャリブレーションを可能とするシステムの高度化を目的としている.一つ目のアプローチとして,非接触に一次元の瞬時速度分布が計測可能なパルスドップラ法に着目し,計測システムの構築や,従来に比べ速い速度の計測を可能とする手法の開発を行うことで,平時に使用する伝播時間差式超音波流量計のオンサイトキャリブレーションを実現するシステムの構築を行っている. 二つ目のアプローチとして,既設配管に取り付け可能なクランプオン式超音波流量計において,伝播時間差式流量計による複測定線での計測の実現を目指した研究に取り組んでいる.

 

研究内容

Fig. 1 Ultrasonic pulse Doppler velocity profiler
Fig. 2 Velocity profile measured using UDV
Fig. 3 TOF flowmeter
 

 伝播時間差式超音波流量計の精度に及ぼす速度分布の影響を評価することを目的として,超音波の伝播時間と速度分布の同時計測を行った.計測システムはPC,高速デジタイザ,超音波パルサ・レ シーバ,ファンクションジェネレータ及び一対の超音波トランスデューサによって構成し,システムを独自に構築している.
 超音波流速分布計測法(UDV)は,一方のトランスデューサから超音波パルスを発信し,得られたエコー信号から測定線上の瞬時速度分布を計測する手法である. さらに,同時に他方のトランスデューサによって超音波パルスを受信することによって,超音波の伝播時間(TOF)を計測した.これにより瞬時速度分布とTOFとの同時計測を実現することで,TOFのオンサイトキャリブレーションを実現した.
 図2は,UDVによって計測した瞬時速度分布と,測定線上の線平均速度を示している.伝播時間と速度分布から求まる線平均速度をそれぞれ比較したところ,誤差1%程度で一致し,瞬時の比較においても傾向が良く一致した.これにより, 上流部に曲がり部を有する条件においても,オンサイトキャリブレーションによってTOFを用いて高精度に流量計測が可能であることを示した.
 現在,配管外にセンサを設置し,既設配管における流量計測が可能なクランプオン式超音波流量計において,高精度な計測が可能な手法について研究を行っている(図3).

 

発表論文

E. Muramatsu, H. Murakawa, D. Hashiguchi, K. Sugimoto, H. Asano, S. Wada, N. Furuichi
Applicability of hybrid ultrasonic flow meter for wide-range flow-rate under distorted velocity profile conditions, Experimental Thermal and Fluid Science 94 (2018), pp.49-58. https://doi.org/10.1016/j.expthermflusci.2018.01.032

E. Muramatsu, H. Murakawa, K. Sugimoto, H. Asano, N. Takenaka, N. Furuichi
Multi-wave ultrasonic Doppler method for measuring high flow-rates using staggered pulse intervals, Measurement Science and Technology 27 (2016), 025303 (11pp). https://doi.org/10.1088/0957-0233/27/2/025303

H. Murakawa, E. Muramatsu, K. Sugimoto, N. Takenaka, N. Furuichi
A dealiasing method for use with ultrasonic pulsed Doppler in measuring velocity profiles and flow rates in pipes, Measurement Science and Technology 26 (2015), 085301 (11pp). https://doi.org/10.1088/0957-0233/26/8/085301

E. Muramatsu, H. Murakawa, K. Sugimoto, N. Takenaka
A new method for high flow rate measurement using ultrasonic multi-wave pulsed Doppler method with staggered trigger, Proc. of International Conference on Power Engineering-15 (2015) #ICOPE-15-1040. https://doi.org/10.1299/jsmeicope.2015.12._ICOPE-15-_27


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