防音塀のいろいろ(国道43号線,神戸市東灘区深江付近および阪神高速,神戸駅付近ほか)


 



国道43号線,神戸市と芦屋市の境界線付近での防音塀の様子です.この写真では,沿道(写真の画面右側)には在来工法の民家を中心に住宅が密集しており,金属製の防音塀が設置されています.あとで紹介するような透明部分はありません.これは,沿道の民家側のプライバシーも含めて考慮したためと思われます.一般に,騒音源は見えない方が,うるささは小さく感じられると言われます.

 



最近は防音塀もカラフルになっています.この付近の43号線では,道路の外側の面はクリーム色と水色です.しかし,道路側の面は,この写真のようにグレー一色になっています.写真にも見られるとおり,内側の面はグリル状に細かい開口があり,内部に吸音材が入っています.これは,塀の反射によって沿道や道路での騒音レベルが上昇するのを避けるためです.

 



上の写真の,道路をはさんで反対側です.この例では,防音塀の下側半分が透明なアクリルになっています.この写真の画面左側は建物までかなりはなれており,高層住宅と社員寮のホールになっています.あまりプライバシーに配慮する必要性がないようです.また,沿道の住宅からは,道路を走る車はあまり見えないと思われます.なお,このアクリル板はかなり厚く,重量も相当あるもののようです.

 



上の2つから50mほどの部分ですが,ここは沿道には駐車場と郵便局だけで,民家はありません.そのためか,塀全体が透明なアクリルになっています.アクリルで透明にするのは,運転者側への配慮としてそとの景色が見えるようにすることと,沿道に対しても塀による閉塞感を和らげるねらいもあるようですが,音源が見えることやプライバシーの問題など,対策上好ましくない面も否定できません.

 



これは,同じ箇所の阪神高速の防音塀です.画面の手前側の部分は沿道に民家が少なく,低層の建物ばかりなので塀は低めですが,奥の方は高層住宅が沿道にあるためか高い塀が設けられ,道路側にひさしのように傾斜して被さっている部分があります.これは,回折角を深くして経路差を稼ぐことによって,回折減衰を高めようとするものです.

 



上図の手前側,低い部分の塀を近づいてみたものです.上端の黒い部分は吸音体で,エッジの2次音源(回折はエッジ部分の2次音源からの再放射と解釈できる)を減衰させるもので,これによって塀の回折減衰効果が若干向上することが知られています.また,下端のグレーの部分は,桁からの放射を防ぐためのカバーです.

 



上の2つから100mほど大阪よりの,芦屋川付近での阪神高速の様子です.この部分は周囲に民家がほとんどなく,そのためか半透明の防音塀が採用されています.写真に見られるように塀を通して走行中の車影が見えます.前述の通り,音源が見えることやプライバシーの問題などもありますが,この部分ではあまり問題にならないかもしれません.

 


さて,これらの防音塀ですが,走っている車内から見るとどんな風に見えるのでしょうか?内側から見たところをご紹介しましょう.<写真提供:中西伸介氏>

 



上で見たのと同様な透明な防音塀を,内側から見たところです.透明な塀を採用することで,運転者からは車外の景色がよく見えます.不透明な防音塀を採用した場合は視線が完全に遮られ,車外の風景が見えないため単調な景色となり,運転者の安全上問題となるとも言われていました.その他,沿道の建物に対しても,不透明な塀による閉塞感が,透明な塀によって改善されるとも言われます.一方,騒音源である走行中の自動車が見えることで,かえって騒音に対する「うるささ」が大きくなることも指摘されます.また,日照の問題から,透明な塀が採用されることもあるとのことです.

 



防音塀の上端をアップで写したものです.先端のグレーの円筒型の部分は吸音体で,塀のエッジに吸音処理を施すことで,回折減衰の効果を向上させるためのものです.

 



この部分は,周囲に騒音対策を要する建物がほとんどないためか,写真のようなルーバーが設置されています.これは,騒音対策上はほとんど効果はありません.

 


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