音響学講義ノート No.12
声とことば
★音声器官の概要(「音のなんでも小事典」pp.302〜)
- 声のエネルギー源:声のエネルギー源は,肺から出る空気の流れ.声を出すときにはいつも空気を吐き出している.
- 声帯:気管の出口でのどの奥の部分(喉頭)にある.筋肉と粘膜でできた,1cmほどの左右一対の帯.声帯のすき間を声門といい,普通に呼吸をしているときは筋肉がゆるんだ状態で,声門は開いている.声を出すときには,筋肉が縮んで声門が閉じ,そこへ肺からの空気が無理に押しだそうとするため,声帯が振動して声門の開閉状態を繰り返す.その結果,声の音源となる空気の断続的な流れが発生する.(リード楽器と似ている.)声帯の振動は100〜300Hzくらいの振動で,声帯から出る音は,ブザーのような音である.
- 声道:のどから唇まで(声道)には,多数の空洞(口腔)があり,声帯の振動で作られた音源が声として出るまでに通る道である.声道は,管楽器と同じように音の共鳴器であり,これらの共鳴によって声ができあがる.
- 声道の形と共鳴の性質:共鳴の性質は,声道の形によって決まり,個々の母音のもつ共鳴の性質を作り出すために,それぞれに対応した声道の形を変える必要がある.
★声の音響的性質
- 母音とホルマント(Formant):ホルマントとは,それぞれの母音に固有の特徴であり,それぞれの母音毎に決まった周波数の成分が強く現れるものである.男声,女声で若干の差はあるが,ア,イ,ウ,エ,オの各母音ごとに決まった周波数である.
- シンガーズ・ホルマント(Singer's
Formant):特殊なホルマントとして,ベルカント唱法の男声に限り,2.8kHz付近にホルマントが現れる.
- 女声の母音が分かりにくいのは...:女声は高音域の歌唱時には,どの母音でもホルマント周波数が同じくらいになるために,母音の違いがはっきり聞き取りにくくなる.
- 指向性:通常は,歌い声の場合には,音のエネルギは主に正面方向に強く放射される.また,口の真正面よりも,若干下向きの方向が強くなる傾向がある.
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