音響学講義ノート No.11
音を聞くしくみ−聴覚機構の概要
★音を聞く−外耳から内耳へ(「音のなんでも小事典」:pp.287〜)
- 耳介:いわゆる「耳」と呼ばれている部分.音を集める役割がある.さまざまなくぼみがあるが,それぞれに音の方向定位(音が到来する方向を知覚すること)に関係している.
- 外耳:耳介から外耳道を経て鼓膜に至る部分を,外耳という.外耳道は,ふつう「耳の穴」と呼ばれている音の通り道であり,鼓膜までの奥行き約3cmの管である.
- 鼓膜:外耳道を通った音は,その奥にある鼓膜を振動させる.強い音ほど,鼓膜の振動は大きくなる.ある限界を超えれば,鼓膜が破れることもある.太鼓の皮のように固定されているのではなく,ちょうつがいで止められたドアのようになっている.
- 中耳:鼓膜のすぐ奥が中耳である.鼓膜の後には鼓室と呼ばれる空間があるが,耳管を通して外の空気とつながっている.鼓室の中には耳小骨と呼ばれる小さな骨(鎚骨,砧骨,鐙骨の3つの部分からなる)があり,鼓膜の振動はこれを通して内耳に伝えられる.
- 内耳:内耳には蝸牛(いわゆる「かたつむり管」)がある.らせん形に約3回転した管で,大きさは大豆程度だが,管の延長は3cmくらいある.内部はリンパ液で満たされ,基底膜と呼ばれる細胞膜がある.耳小骨の端は内耳の入り口に接合しており,その振動はリンパ液に伝えられ,これによって基底膜が振動する.基底膜は,聴覚における音の周波数分析に重要な役割を果たす.
★音を聞く−内耳から脳へ(「音のなんでも小事典」:pp.288〜)
- 有毛細胞:基底膜の上には,有毛細胞と呼ばれる先端に固い毛を持つ神経細胞が1万5千個余り並んでいて,それぞれが聴神経とつながっている.音の高さに応じて異なる基底膜の振動の仕方に応じて,異なる部分の有毛細胞が反応し,周波数分析が行われる.
- 大脳の聴覚野:音の情報は,最終的には神経パルスと呼ばれる電気信号となって,聴神経を通って大脳の聴覚野と呼ばれる部分に伝えられる.
★音の心理(「音のなんでも小事典」:pp.292〜)
- 音の大きさ
- 音の高さと音色
- マスキングと情報圧縮(pp.40〜41も参照):マスキングとは,ある音が別の音によって妨害され,聞き取りにくくなる現象.(例:うるさい場所では電話が聞き取りにくくなる...etc.)同時になる2音間で起こる同時マスキングと,時間的にずれのある2音間で起こる継時マスキングがある.同時マスキングでは,マスクする音(マスカー=妨害音)より高い周波数の音に,特に強い影響がある.MD(ミニディスク)やMPEGでは,マスキングを利用して音の情報を圧縮している(マスクされている部分の情報を省略している.)
- 音の方向:音の方向知覚には,左右2つの耳が重要な役割を果たす.両耳に入る音響信号の差(両耳差)を,手がかりとしている.
- その他の関連事項:カクテルパーティ効果(pp.66〜68),バイノーラル録音(pp.245〜247)など.
No.10へ戻る
No.12へ進む
目次へ戻る