音響学 講義ノート No.5
室内音響とコンサートホール(その1)


★ 室内音場の特徴

◇ 残響の量:残響の多い・少ないは,残響の長さ,すなわち残響時間で表される.残響時間は,室内の音のエネルギが,音源が鳴っているときの100万分の1に減衰するまでに要する時間である.
◇ 残響時間の公式:残響時間は次の式で表される.  

残響時間=0.16×(室の容積[m3])/(室の全吸音力)

これを,セイビン(Sabine)の公式という.「室の全吸音力」とは,大ざっぱに言えば室内にある音を吸収(吸音)する物質(吸音材)の量と考えてもよい.この式で重要なのは,

(1)室の容積が大きいほど(大きな室ほど)残響時間は長い,
(2)室内に吸音材が少ないほど残響時間が長い,ということである.

◇ 残響の特性:上記の式を使えば,室の残響時間が計算できる.ところで,残響時間は周波数によって異なるのが普通である.つまり,上式で「室の全吸音力」は,吸音材の性質に応じて周波数によって異なるため,その結果残響時間も周波数毎に違うのが普通である.一般的には,残響時間は低音ほど長く,高音ほど短い.そこで,コンサートホールの特性として残響時間を表記するときには,
(1)各周波数ごとの値を一覧表にする,あるいは
(2)500Hzの残響時間を代表として使う,
のどちらかが行われる.

★コンサートホールの音を聞き比べてみよう


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